恋人は心に住んでいる
23/10/3
秋が訪れた時って、ヒヤッとした寒さが鼻を通り抜けて、心の空洞まで風が滲み入る感じがする。毎年同じ冷たさを感じているのに、なぜかいつも寂しい感情があらわれる。
寒くなり始める時期、今までは失恋を経験する季節だった。
その度私は、沢山の秋の景色を敏感に感じ取ることができて、それらを喪失感と美しさを混ぜた、ピリッと尖った空気と記憶した。
その影響から、この季節の匂いは悲しいものとなっていた。
でもこの間の秋は、それらを寂しい匂いだと感じなかった。
ただ適度な質感の空気に当たりながら外を歩いている感覚。
それはもしかしたら、恋人の存在が影響していたかもしれない。
心の中に恋人が住んでいて、2人分の想いが混在する。心に2人分の重量があるおかげなのか、皮膚から感じる空気のテクスチャーに鈍感になっていた。
(空気にテクスチャーなんかないけど、でも本当に、そのように空気を捉えてる)
恋人の温かい存在が介在することで、乾いた空気が心地よかった。
次の秋はどんな匂いがするだろう。